学習端末の文具化
8月8日(木)第2回教育情報化カンファレンinおおいた「未来を生きる子どもたちに必要な情報活用力を考える」大分県教育委員会、ハイパーネットワーク社会研究所主催 が大分市コンパルホールで開かれ、亀澤が参加してきました。
大分県では教育委員会のなかに教育情報化推進本部が設けられ、組織的な体制ができています。また、Web上にOENシステムを構築し、メールやカレンダー、ドライブ、サイトなど、どこからでも、いつでも、色々な端末で利用できるようになっていることが紹介されました。
基調講演1は「ICT活用授業の学習効果と情報活用能力の育成」豊田充崇氏(和歌山大 学教育学部準教授)でした。
文部科学省の「教科活動におけるICT活用と学力・学習状況の関係に関する調査研究」 によると、普通教室のICT環境整備が進むとICT活用の頻度が高くなる、ICTを活用した授業の頻度が高いほど、国語,算数の平均正答率が高くなるという結果が出ています。
それはICT活用によって授業の効率化(一斉授業の場面での説明時間の短縮やビジュア ルな資料提示による集中力の持続、提示した資料を元にした明確な指示・発問の徹底等)が図られることにあります。
より思考を深められる授業場面が多くなること、低学力層の児童への手厚いケアが可能になることなどの授業改善が功を奏しているからです。
そのためにはやはり「普通教室のICT常設環境の整備」は必須であり、そこから教師の ICT活用(主に提示用)が始まり、児童生徒(主に発表用)の活用に広がり、情報活用 力・創作・表現力が自然に身につくようになるということでした。
今後の流れとして、一人1台の学習用端末活用による授業が構想されています。 情報教育の目標は、機器操作に慣れることや単なる 教材提示にとどまりません。短時間で、情報活用しながら課題解決力を育成することです。
今後は学習用端末を個人所有(文具化)にすること、教育用のSNSを設置すること 、新たな学習システムを構築することなどが求められています。
注意しなけばならないのは、指導力不足を補うツールとしてのICT活用は逆効果であり 、生徒が興味を持つのもせいぜい3ヶ月ということでした。デジタル教科書や優れたコ ンテンツは学習効果には関係ないということです。
自発的に興味関心を示す生徒ほど、ICT活用の学習効果は高いという結果も出ています。主体的な学習、モチ ベーションを高める授業の工夫が常に必要なようです。
印象に残ったことばに「新しい学習指導要録の目的を達成するためには、従来の教室環境や教具では不可能」という発言がありました。その意味を吟味すべきでしょう。
基調講演2は「一人1台のタブレット端末で学びはどう変わるか」永野直氏(千葉県 立袖ヶ浦高等学校教諭)でした。新設学科「情報コミュニケーション科」を設置され 、そこでの実践報告でした。
ここではすでに個人用端末を入学時に各自で購入させ、授業で使っているということ です。先に豊田氏が挙げた今後の流れをすでに実践されています。
興味深かったのは、教科「情報」を単独ではなく、他の教科と連携させ同時展開で授業をされているということでした。ICT活用を他の教科に積極的に組み入れることで、コンテンツの共有、コミュニケーション、協働学習 などを可能にし、思考力や表現力を高めていこうということです。
また、レポートはWeb上の共有フォルダに提出し、他の生徒と共有することや、教材資料もそこにアッ プすることで自宅学習も可能になっています。反転学習のことも話題に上がりました。
教えあい、学びあう、協働的な学習場面の増加と生徒たちで判断する情報モラル(生徒のアイデアや工夫を授業に反映)などは、インプットよりアウトプットを重視した授業展開といえるでしょう。
すでにPCは学校備品から個人持ち(文具化)の流れにあります。またケータイやスマホの利用率は高まり、SNSの活用も日常化しています。その現実を踏まえて、学校教育のなかで「適切な利用、学習への有効活用」が図られる段階に入ってきているとの印象を深くしました。
豊田氏や永野氏に、懇親会の席上、ぜひ宮崎にもお出でくださいとお声掛けしておきました。