自治体クラウド
今年度第2回研修会(平成22年7月14日)は、「自治体クラウド・共同アウトソーシングの動向と今後の教育分野の情報化推進に関して」と題して、宮崎県情報政策課井上英幸主幹に報告してもらいました。その内容を簡単に整理してみました。
1.ASP/SaaS/クラウド
これらの言葉について、ネット上の「どこか」にリソース(ハード、ソフト、データ)があり、それらを利用して情報処理を行う状態(サービス)のことと説明されました。つまり、ネットワークやソフトの管理が、「所有」から「利用」へと変わりつつあるということです。クラウドは「雲の上」という言い方をされますが、自治体クラウドでは中身がすべて見えていること、クロウズドであることが条件のようです。そこがグーグルやアマゾンなどの民間クラウドと違うところだそうです。
2.クラウド化推進に関する国の動き
総務省「新たな成長戦略-原口ビジョンⅡ-」(H22.4.27)に、興味ある内容が盛り込まれています。ICT維新ビジョン2.0の推進、緑の分権改革の推進、埋もれている資産の活用などが提言されていますが、そのなかにICTによる協働型教育改革の実現という構想もあり、そこで教育クラウドも想定されていました。
3.自治体クラウド開発実証事業
これは平成21年度総務省の公募事業のひとつとですが、都道府県をリーダーに複数の市町村が行政システムを共同利用し、その形態を検証しようというものです。電子行政を強力に推進するため、クラウドを利用(実際はLGWANを利用)し、運用に係る費用を半分にするというものです。この事業に北海道、京都、佐賀、大分、宮崎、徳島が採択されており、大分、宮崎は合同のプロジェクトとして6億円の事業費が予算化されています。佐賀はバックアップ用として採択されています。
共同利用のシステムには、住民情報、税務、保険、福祉、財務会計、人事給与などがあり、各自治体の異なる業務をいかに標準化するかや、地場ベンダーとの関係、規模の異なる自治体間の調整などが課題となっています。(データセンターは延岡市)
4.宮崎県における情報通信政策
上記のように、宮崎県でも市町村共同利用によるクラウド化は推進されつつあり、他県との共同システムが検討されつつあります。平成22年度の主な推進事業でも、電子県庁推進指針、行政情報システム全体適正化、新宮崎情報ハイウェイ21、自治体クラウド開発実証事業などがあり、宮崎においても時代の大きなうねりが感じられました。
5.教育分野の情報化に関する考察
文科省「学校教育の情報化に関する懇談会」で、今までの論議を整理して「学校教育の情報化ビジョン骨子(素案)」が明らかにされています(7月7日)。第3章「校務情報化の在り方」、第4章「教員への支援の在り方」、第6章「学校教育の情報化の着実な推進に向けて」を取り上げ、今後の教育情報化に関わる注目点をピックアップされました。
何より、宮崎県の情報化に関するビジョン、方向性が見えないことが大きな課題です。文科省の動向を睨みながら、早急にプランを策定すべきでしょう。この素案にも書かれているように、学識経験者、行政関係者、教員、民間企業、地域、保護者など関係者が一体となって推進すること、つまり広範なネットワークの形成が大事だと感じました。(つづく)