英語科におけるICT活用と課題

第4回研修会(11月10日)は「英語科におけるICT活用と課題」と題して近藤明子先生(宮崎大宮高等学校)に授業実践を報告していただきました。参加者も英語の模擬授業を受けながら、動画視聴を含め、英語の発声練習やクイズなど、楽しいひとときでした。以下、当日の内容です。

<近藤先生の報告>

英語の教科書に載っている現実的なテーマはその内容がすぐに古くなってしまいます。そこでインターネットで検索すると、最近ではユーチューブの動画がたくさんヒットするようになりました。そこでユーチューブを活用してタイムリーな資料(映像)を生徒たちに提供することにしたのです。今回は名古屋で開かれていたコップ10の生物多様性について、国連のメッセージや名誉大使になっている歌手のMISIAさんの映像を流しました。教科書に載っていない単語や英語のスピーチなどを映像で見せることができます。

ユーチューブを利用するには、映像をダウンロードしてファイル変換し、外部媒体等に保存しなければなりません。そのため多くの時間を要するため、その作業は休日を利用してやらざるを得ません。今回はUSBに保存し、それに対応したプロジェクター(EPSON EB-1724)を購入してもらいました。

英語の授業ではイメージがとても大切です。聞くだけでは英語は上達しません。その点、ユーチューブなどの動画は生徒たちの興味も惹くし、授業に変化を持たせることもできます。

例えば、教科書に載っていた「自転車の歴史と自動車、飛行機への応用を知り、自転車の利点を考える」単元では、その動きをことばや写真だけで説明するのはとても困難です。その点、動画を使うと見ただけでその動きが理解できます。また、わからない単語も何度も映像で見せることで、その意味を理解できるようになります。

また、パワーポイントは英文導入や英文解説に利用しています。文字を隠したり、図形を回転させたりできるので、多様な解説を加えることができます。例えば、「知覚と錯覚」の項目では教科書に載っていた抽象的な図形を取り込み、いろいろ反転、回転させながら、その元の図形を当てさせるのです。

遊びながらゲーム感覚で授業を展開することができるため、生徒の食いつきもいいです。どうしても生徒たちは紙の資料に頼りがちですが、パワーポイントは画像だけですみますので、紙を印刷する手間も省けるし、ペーパーレスにもつながります。

現在、同じ教科の先生方にも働きかけてそれぞれが作成した教材を共有するようにしています。機器操作についてもお互いに研修し合いながらやると、いろんなアイデアも出てきます。そうやって広げることができればと思っています。業者の方も機器を売るだけでなく、ぜひその操作のサポートまでしていただきたいですね。

課題として、設置時間と設置場所があげられます。

準備する機器は、パソコン、液晶プロジェクタ、CDプレーヤー(スピーカー)、模造紙(スクリーン)などですが、その搬送、設置に時間を取られます。機器は屈強な男子生徒に運ばせて、授業開始の小テスト(10分ほど)を利用して設置しています。

また、本校は普通科校で原則1学級40人ですが、生徒用の机椅子で教室は満杯状態であり、機器を設置する場所に苦労します。教室コンセントの位置もあり、あわてるとコードに躓いたりすることもあります。液晶プロジェクタとスクリーンが普通教室にも固定してあると便利ですが、なかなかそこまでは望めません。以上で報告を終わります。

<座談会>

実際に授業を担当している先生の報告は臨場感があってとても有意義なものでした。どんな授業をされているかも興味がありましたが、どんなところで困っているのか、何が必要なのかを考えせられることがとても参考になったような気がします。その他、困ったこととしてあげられたのは以下のようなことでした。

1、ケーブル配線と接続プラグがわからない。
2、プロジェクタの機能がわからない。
3、ユーチューブなど、動画使用の著作権が心配である。
4、ソフト(PPT)のライセンスがないので、自宅で教材作りができない。

参加者からは、動画(ユーチューブ)の著作権については提供者の所属団体や利用条件を確認することが必要だという意見が出されました。自由に使えるコンテンツも増えていますが、高校用は少ないのが現状です。ライセンスの問題ではオープンオフィスの利用もあがりましたが、マイクロオフィスのユーザーがどうしても多く、教育研修センターでもそちらの研修をせざるを得ないのが現状のようです。1については色テープをつけるとか、2についても簡単な図形シールを貼るとかで解決できそうな気がします。

今回も初参加者がありましたが、報告者の授業に対する工夫や熱意に感嘆の声があがっていました。ICT機器を使った楽しく刺激的な授業に接すると、もっといろんな先生方に広めたいと思ってしまいますね。