クラウドと教育

前回からのつづきです。

6.意見交換
 標準化やクラウド化は、はたしてよいことなのか。時代の流れということで、結局、モノをつくる、匠を育てる、技術を蓄える面が疎かになっていくのではないか、という意見が出されました。モノを手に取ってあつかう楽しみが、標準化やクラウド化で奪われる危険性がある。自分で作ってみる(プログラミングしてみる)という基本はいつでも大事ではないかという問題提起です。

 モノ作りの大事さは理解しながらも、技術者を育てるということと校務の標準化とは異なるのではないか。学校現場の多忙化は標準化で楽になる面もあるという対論が出された。それに対し、標準化や操作性が向上すると、逆についていけない先生が増えるのではないかという懸念も出されました。

 スクール・ニューディールでICT機器が学校に整備されたが使い方がわからないという実態もあります。やはり情報パイロット的な水先案内人(ICT支援員など)が必要です。予算的には標準化は必須だし、サポートの必要性はなくならないでしょう。ベンダーロック(仕様の閉鎖性)の問題もあり、それが機器整備やシステム管理の予算増にもつながっています。個性を必要としない部分での標準化はやはり進めるべきでしょう。

 団塊の世代が退職すると授業力も低下していくのではないかという懸念も出されました。ICT機器の操作が得意だけではもちろん教科指導はできません。授業がうまくいかなくて先生がひきこもるケースもあるという話も出ました。そして、そんな若い先生が増えているのではないかということです。教育研修センターでは初任研、5年研、10年研を通して教育力を高める努力をしているということでした。

 業者の方からは、コンピュータを導入する時にどんな使い方をするかは学校と協議することになっているが、そこに目的や効果を入れる学校は少ないという指摘がされました。具体的な方策がないと、どこの学校も似たような仕様(機器のみの)になるということです。以前は個性的な先生が多く、システム構築についても様々な要求があったが、最近はあまり見かけなくなったといいます。

 小中学校ではどうなのでしょうか。現場の声を反映して整備された学校では機器がよく使われているそうです。また、指導主事のいる市町村の学校ではICT研修が充実し、上達も早いといいます。その操作の面では、無線LANでのシンクライアント方式やIPadのような使い方ができるとよいのではないかという意見も出されました。ネットの速度が速くなりかなり使えるようになってきています。確かに今後、デジタル教科書を始め、携帯端末(タブレットPCも含めて)はより開発されていくでしょう。

 そのなかで、電磁波の安全性に問題はないかという意見も出されました。携帯電話や電子レンジ、家電製品など総合的に検証する必要がありますが、今のところメーカーは安全性をうたっています。ただ、10年先、20年先になってみないとわかりません。そういう身体的な影響も常に意識しておく必要があるでしょう。

 今回、初参加の方が4名おられて、それぞれに感想を述べていただきました。様々な業種の方から様々な意見が出されて、結論は出ませんが、各自の業務や生き方に参考になったのではないかと思います。今回は自治体クラウドを中心に情報化をとりまく時代の流れや学校現場での問題点等も出されて、また次回につながる研修会になりました。

 その後の交流会ではマンゴーやお手製かるかんの差し入れもあり、アットホームな雰囲気で、ここでも隣同士で自己紹介や意見交換が行われました。秋の韓国研修視察(熟議カケアイ宮崎版)をぜひ実現させたいですね。