コンピュータを活用した金融・経済系授業実践

第5回研修会(1月12日)は「コンピュータを活用した金融・経済系授業実践」と題して宮崎産業経営大学の久保田博道先生に報告していただきました。

大学でもここ数年、学生間の興味のあり方、基礎素養の格差が広がり、画一的な講義形式の授業が難しくなっているということです。いかに効率的に学生を把握しながら、個々の学生の学習効果をあげるかが課題になっているようです。これはどの教育現場でも先生方が悩まれる問題でしょう。

その課題解決に向けて、今回、ふたつの実践例を報告していただきました。ひとつは、授業支援システムの活用です。大学関係の授業支援システム(LMS:Learning Management System)には、オープンソースでmoodle(三重大学版)やceas(関西大学冬木研究室版)、Blactboardなどさまざまにあるようです。

久保田先生はそのなかでceasを使われているということです。「いかに楽に授業を進めるか」を常に考えているということですが、それは効率性を考えるのと同じことになります。そこにICTの利用が浮上してきます。LMSの機能はWebシステムで構成されており、学生の登録から出欠管理、授業内容の表示、資料の配布、レポートの提出、集計、メール配信や掲示板など、直接Webサイトにアクセスして紹介されました。

実際に使っておられる個々の機能やメニューを見せてもらいましたが、既存の電子教材の利用など動画資料も含めて授業の流れや課題がよくわかりました。ご専門が金融論ということで、日本銀行や金融庁のサイトなど授業で利用されているコンテンツを見せてもらいましたが、さまざまな機関が学習用の優れたサイトを作成しているのですね。高校用はコンテンツが少ないといわれますがが探せば結構あるような気がしました。

通常はコンピュータ室で授業をされていますが、学外からもアクセス可能で、レポートの提出などEラーニングとしても活用できるようです。今後、個人用パソコンやスマートフォンが普及してくれば、もっと必要とされていくのではないかと思いました。

ふたつめは、ペンタブレットを使った自習教材の作成です。ワードやエクセル、パワーポイントでの資料作成は時間がかかります。既存の資料をPDF化し、そこに直接書き込みながら説明を加えていく。その方が簡単だということです。

単に資料を提示しただけでは学生はどこが重要なのかわかりません。傍線を引いたり、丸で囲ったり、余白に説明を加えたりすることで、理解度を高めることができます。実物投影機や電子黒板的な使い方と同じですが、情報コンテンツ作成ソフトであるThinkBoardを使えば、その用途が広がるということで紹介がありました。

ThinkBoardをインストールしたパソコンに教材をスキャン(取り込み)し、それにペンタブレットで書き込みながら、マイクで音声を加えていきます。そのまま録音録画できますので、一度、保存すると何度でもその描画と音声を再生することができます。先生の顔や表情は録画されませんが、ビデオ撮影に比べ、安価、安直、短時間でできます。何より保存容量が少ないのも特徴でしょう。

授業中は液晶プロジェクタを通して前面のスクリーンに映し出されますが、無線lanタブレットを使えば、教室内を巡回しながら授業が行えます。個々の学生の進度に合わせて授業を進めることができるのです。再生が可能なので、独学用、復習用、ひとりでのチームティーチング用から授業研究まで使えます。もちろんその教材作りには教員の経験や工夫が不可欠なことを改めて強調されました。

意見交換では、生徒(学生)の思考能力をいかに高めるか、そのためにどうしたらよいかが話題となりました。答えを早く知りたがる学生、考えることが苦手な学生など、大学でも同様の悩みがあるといわれます。高校でも相変わらず課題、宿題の量を増やす紙ベースでの授業が盛んです。なかなか質への転換が図られていません。習熟度別学習の限界も指摘されています。情報教育もプレゼンを作り、見せるだけ、機器を使わせるだけではそこにつながっていかない、などの意見が出されました。

自ら思考し、創造していく。そんな生徒たちをICT機器を使ってどのように伸ばしていくか。時代はグローバルな社会となり、個人からチームへ、仕事から役割へ、コミュニケーションからコラボレーションへと重点が移ってきています。大学でのLMSの利用や高校でのグループウェアの利用も全体としてはまだ少数派に留まっているようです。教育情報機器に対してもユーザビリティ(使いやすさ)などユニバーサルデザインが求められていることを痛感しました。

懇親会に移って14名の参加がありました。M社で参加の男女お二人が入籍されたばかりという自己紹介もあって、新年会、祝賀会も兼ねた賑やかな会になりました。ここでも趣味の話から、教育論議、ICT支援活動など、さまざまな話題が飛び交いました。いつも思うことですが、立場を越えてこんな話ができることはホントに有難いです。この輪が広がり、助け合いながら、宮崎の教育ICT向上につなげていければと思いました。