カイコの解剖授業

IMG_69148月22日(金)、第2回教育ICT研修会が宮崎大宮高等学校生物室で行われました。

今回は「ICT機器を使ったカイコの解剖授業」と題して宮崎大宮高校の黒木和樹先生に、実際に参加者にもカイコの解剖をしてもらいながら、授業実践を報告してもらいました。

興味深かったのは理科の授業でありながら、冒頭、宮沢賢治の童話なを引き合いに出しながら、昔話の構成(くり返しの法則、3の聖数、最後部優先の法則など)と解剖実習と結び付けられて説明されたことです。

生徒たちに興味を持たせる方法を童話の構成に学び、それを参考にしながら指導案を練られたということです。そこからいかに「身体の構造を学ぶ」か(主題)、「命について考える」か(副題)に、結びつける実践報告でした。

IMG_6916解剖でのルール(基本)を押さえることが肝心だということで、次の点を強調されました。

①身体の構造をスケッチする(写真撮影禁止)
②解剖技術を習得する
③アニマルウェルフェア(3Rの原則)について学ぶ
④命について考える

生徒たちには必ず生き物の飼育からしてもらったそうです。今回の参加者もそのつもりで解剖にたずさわりました。

実際、指先にカイコを乗せると可愛さが募ります。足の動きの感触も伝わります。それを熱湯のなかに入れて殺します。そんなに暴れないのが救いでした。それを取り出し、バット(平容器)に移し、解剖が始まりました。

その説明が実物投影機や電子黒板を使って行われました。

画面に映し出される先生の解剖手順を見ながら、各自カミソリで切り口をつけ、はさみで切り開いていきます。表皮を広げて虫ピンで押さえ、生理食塩水を注ぎながら、内部形態を観察していきます。

IMG_6915どの参加者も真剣な眼差しでピンセットやはさみを使い解剖に挑戦していきます。内臓の美しさにびっくりです。当然ながら、すごくリアルでした。

ここではICT機器はあくまで教材提示(説明用)のツールとして自然に使われています。ICT機器を使っているという意識は感じられません。

先生の操作が画面にアップされますので、生徒(参加者)は各自の机からそれをあたかも手元でやっているように見ることができるわけです。

従来は先生の実習台に集まって説明をしていたのでしょうし、後ろの生徒はなかなか細かな確認ができなかったかもしれません。そこに実物投影機や電子黒板が活かされています。

もう一つ特徴的なのはスケッチを必修にする(写真撮影禁止)ということでした。つまり、スケッチすることで新たな発見があり、デッサン力が高まり、プレゼン力につながるということです。手を動かすことの意味が認識されています。

写真ではどうしても見たつもりになり、細かなことに気づかないで終わってしまうことがあるということです。時間がかかっても、実際に鉛筆で摸写する大事さ(アナログ)が授業に活かされています。

それと教科の枠を取り払っているという感想も抱きました。学ぶということは複合的な視点でより豊かになるということ、事象はいろんなことにつながっているということ、特に命を学ぶ授業ではそれが大事なのかもしれません。

今回の報告では、授業の目的を明確にするということ、ICTはあくまでツールとして使うこと、五感に働きかけることが大事だということ、などを改めて確認することができました。

参加者に感想を聞くと、「こんな授業を高校の時に受けていれば、私も医者になったかも」、「アナログを補うのがデジタルだということを確認できた」、「質の高い授業で参考になった」など、満足度の高い実践報告でした。