美術におけるICT活用授業
2011年度第1回教育ICT研修会は5月11日(水)「美術におけるICT活用授業」と題して生目中学校教諭の横瀬勝彦氏に実践報告をお願いしました。今年3月まで宮大付属中で教育の情報化に取り組んでこられただけあって、非常に興味深く、また示唆に富む内容でした。以下は先生の許可を得て、当日の資料からの抜粋です。
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現状
週1時間しか授業がないという現状から、作品をつくる時間を多く確保する授業が行われている。これは、導入の工夫が見られず、分かる授業とは言えない授業が行われている。さらに、鑑賞教育も十分に行われていない。しかし、パソコンやデジタルカメラの活用は、生徒の関心が高くなる等、美術の授業で有効な手段であるという認識をする先生は増えている。しかし、授業の中でどう使って良いのかわからない教師も多い。
美術授業におけるICT
基本的に美術の授業の基本は、作品をつくったり、見たりするアナログな作業である。そこに、いかにデジタルを同居(介在)させるかが、美術教育におけるICT必要性の分かれ目だと感じている。全国の教育現場でもICTの活用は始まったばかり。使用方法も授業の視覚化、参加化のスタイルが基本だが、ICTを使った新たな授業スタイルは確立されていない。
ICT活用の本質
ICTを使うことが目的ではなくて、あくまで『効率のよい授業』や『分かりやすい授業』のために、目的を達成するための手段として、ICTを用いる(時間を有効に使う 生徒の思考を高める 制作・発表意欲を高める等)。ICTを利用することばかりに執着して自己満足していても仕方がない、今までのアナログな授業スタイルの上にICTを用いる。
授業スタイルに合うICTを選ぶ
何をどのようにつくるのかを理解するためのツールとして、あるいは、生徒の思考を高めるツールとして、あるいは、生徒の発表意欲を高めるためのツールとしてICTはある。具体的には、作品と補助線のレイヤーが可能であり、教員の演示にも使うことができる。また、書画カメラによる作品の記録や補助線を引いたワークシートの提示などで理解を深めることができる。もちろん、生徒の発表意欲の向上にもつなげることができる。(補助線を引くワークシートをラミネートしておくと何度でも書き直しが可能。)
ICTの効果
1、生徒の知的好奇心を高める。2、これからつくる作品のイメージを持つ。3、生徒同士のアイデア(知)の共有を図る。これらの効果は大きい。例えば、浮世絵が印象派に与えた影響を構図から推察する授業では、ICTが威力を発揮する。生徒同士の意見を取り入れながら、印象派以前の作品は三角形の安定した構図が多いことや、印象派以降の作品は、三角形の構図があてはまらないこと、日本の浮世絵も三角形の構図でないものが多いことなどを理解させることができる。
環境整備
常設が基本である。思い立ってすぐ使える、特別な準備を必要としないことなどが大事である。今は、テレビ、書画カメラ、パソコンは常にON状態にし、生徒の作品や絵画鑑賞を自由にさせている。管理面では生徒を信頼するしかない。ICT効果の良さを知るためには、無理やり使うのも大事かもしれない。今後の課題としてワークシートの工夫(普段使っているワークシートでは、逆効果になることもある)やコンテンツの活用、デジタル教科書の活用などがあげられる。
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実際に書画カメラをつかっての構図の説明はまさに知的好奇心をくすぐる興味深いものでした。また、ラミネートの活用などはとても参考になる教材づくりです。早速、試してみたいと思いました。10分の説明で40分の製作をあてる授業と、その逆の時間配分では、後者の方が効率的だそうです。意図を充分、理解させた上で製作に取り掛かると完成が早いということでしょう。
協議ではデジタルのデメリットが話題になりました。美術の感性は自然のなかで培われるのではないかという意見に対して、自然を観る目を示唆してやることも重要だと言われました。そこにICTの活用もあるということです。ただ、絵のサイズが16:9ではないことや、色や質感などが実物と同様には出せないことなど限界もあるようです。
いかにICT活用を普及させるか、その効果をどのようにデータ化できるか、などについても意見が出されましたが、やはり、授業の意図や組み立てを真剣に考える以外に道はないようです。